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さりげなく国宝も展示!? 数寄者のコレクションが並ぶ藤田美術館
大阪府には14館の美術館があるのですが、これ全国的には少ないんだそう。人口一人当たりでいえば、全国でも実は一番少ないんだとか(ちなみに1位は長野県で110館美術館があります)。
とはいいつつ、14館全部巡ったことあるよ~という人は、大阪在住の人でもあまり多くないのでは?
今回は14館の中でも、ちょっと足を運んでほしい「藤田美術館」を紹介します。
2022年4月にリニューアルオープンした藤田美術館は、
実業家で男爵だった藤田傳三郎とその息子らが収集した美術品を展示する私立の美術館です。
大規模改修前の約60年間、
明治から大正期に建てられた藤田家邸宅の蔵を改装し、展示室として利用してきました。
「蔵の美術館」と聞けばピンとくる方も多いのではないでしょうか?
規模は小さな美術館ですが、藤田傳三郎の卓越した審美眼で集められた収集品は相当な名品ぞろい。
国宝9件、重要文化財53件を含む約2000件の東洋美術のコレクションを所蔵しています。
展示スペースにもこだわりたっぷりな藤田美術館。
おいしいお茶とお団子がいただけるスペースや
広々とした庭園をもとにした公園もあり、まったりと過ごすにはぴったり。
週末に出掛けてほしい穴場スポットに行ってみました!
■駅徒歩1分に、生まれ変わった美術館が誕生
JR東西線大阪城北詰駅から、徒歩一分という超駅近の立地にあるのが藤田美術館。
多くの蔵が並んでいた藤田家本邸(網島御殿)の跡地で、土蔵を展示スペースとして活用していた美術館で、
春と秋に3カ月ずつ企画展の形でのみ開館するのが特徴でした。
夏は暑く、冬は寒いので、美術品を守るために展示期間を限定していたそう。
そんな藤田美術館、建物の老朽化などを理由に2017年から建替え工事を行っていました。長い休館期間を経て、2022年4月にリニューアルオープン!
新しい美術館は、旧施設で展示室や収蔵庫として利用していた蔵の扉、窓、木材などを利用しつつ、空調や耐震などの設備を備え、休館日は年末年始のみ!
さらに若い人に美術品に親しんでもらいたいと、20歳未満は入館料無料!
太っ腹!
ガラス張りの建物はすっきりした印象。
一歩入ると、係の人が案内してくれます。
なんと! 特にチケットブースなどはなく、係の人にお金を払います。
ここで注意したいのが、藤田美術館では、完全キャッシュレスを目指しているので、
なるべく現金以外の手段で支払いをしてほしいとのこと。
クレジットカード、QRコード払い、交通系ICカードなどでの支払いがベター!
(現金でもOKみたいですけど)
無料のコインロッカーもあるので、荷物を預けてから、
身軽になって展示室に入っていきましょう!
■そもそも藤田傳三郎って誰!?
藤田美術館のコレクションを集めた藤田傳三郎は、明治~大正時代に活躍した実業家。
長州藩出身で、西南戦争で巨万の富を得た後、藤田組(現:DOWAホールディングス)を中心とする藤田財閥を形成。関西財界の重鎮として、活躍しました。傳三郎が設立にかかわった企業は、大阪紡績(現:東洋紡)や阪堺鉄道(現:南海電鉄)、山陽鉄道(現:JR山陽本線)、大阪毎日新聞社(現:毎日新聞)などなど。多角的に経営して、今に残る大企業の設立に尽力しました。
一方で、傳三郎は関西財界でも有数の美術品収集家でもありました。
若い頃から両親に物数奇を戒められるほどでした。
大名旧家や寺社に伝えられてきた文化財の多くが、明治維新を機に、海外へ流出したり、国内で粗雑に扱われたりすることに危機感を覚えた傳三郎。
「散逸するぐらいなら、俺がコレクションしたる!」と決意して、蒐集に乗り出しました。
子どもらにもその志は受け継がれ、藤田家が集めた美術品は相当な数に上りました。
傳三郎の没後、何度か売りに出されたそうですが、
現在各地の美術館に収まっている名品がめじろ押しだったんだそうです。
そして、一部が売られたとはいえ、現在の収蔵品もかなりのレベル。
国宝9件、重文53件を含む数千点が今も藤田美術館に収蔵されています。
大阪府全体で国宝が62点あるので、
府内の国宝の15パーセントぐらいが藤田美術館にあることになりますね。
すげ~!
9個も国宝がない都道府県もあるので、これを個人で集めていたというのは相当すごいことだと思います。
中でも曜変天目茶碗(国宝)は、世界に現存する3点のうちの1点というレア中のレア。
さらに藤田家のコレクションのすごさを語るもう一つの逸話を紹介。
施設リニューアルの資金を確保するために、
収蔵品の一部をニューヨークでオークションにかけることに。
中国美術の名品31点を出品して、
総額2億6280万ドル(約300億円)という記録破りの落札額を達成!
300億円ですよ!
一個で50億円を超えた品もあったのだとか。
すごすぎるぜ!
■静かな展示スペースで美術品と向き合う
旧施設でも使われていた蔵の扉をくぐり抜けると展示スペースに。
漢字一文字で表されたテーマに沿って展示されていました。
美術品鑑賞に集中してほしいと、余計な解説やキャプションは一切なし。
作品名と制作時期だけが控えめに記載されています。
詳細な解説はQRコードで各自がケータイなどで閲覧する形式を採用。
もともと蔵で使われていた床材などが音を吸収するのかどうかわかりませんが、
展示スペースはかなり静かで、ゆっくり鑑賞できます。
ほえ~と一つ一つ眺めることができます。
しばらく眺めていて、思い出したようにケータイで解説を読むと、
普通に展示されていた絵巻や経典を入れる箱が国宝だと判明!
もっと大っぴらに宣言してもいいのよ……
ただし、作品を鑑賞するという意味では、
それが国宝でも重文でもそうでなくても、関係ないんだなと
藤田美術館が考える作品との向き合い方に
うなずけます。
知識がなさ過ぎて、何かもよくわからないまま鑑賞していた品も。
これは抹茶を入れておく、「茶入」と呼ばれる容器だとか。
ストロングスタイルの展示すぎて、
添えられている書状も、HPの作品解説を見ないと内容が分かりません……
試される鑑賞眼。
でも余計な情報を入れずに見られるのは結構新鮮で楽しい。
■お庭から隣接した公園にも出られる
展示スペースの出口も土蔵の門が使用されていました。
さらに庭にも出ることができます。
広い庭には茶室や、多宝塔が。
これ個人宅に建ってたのか……すごいな。
腰掛けられるベンチスペースも。
さらに、併設の公園(藤田邸跡公園)にも出られます。
こちらの公園も藤田家の敷地の一部だったようで、公園の面積は1万6000平方メートル。
かつての藤田邸は公園や美術館の敷地も含めて、
このあたり一帯を約5万3,000平方メートルほどあったそう。
広い!
東京ドーム1.13個分ぐらいみたいです。
広い!
立派な日本庭園が整備されており、大阪市の名勝に指定されています。
ビルに囲まれているのに、ここだけひっそりとしていてまさに都会のオアシス!
訪れた日は何人もの人がスケッチブックに絵を描いていました。
展示見て、公園ぶらぶらしていたら、日ごろの疲れも癒えますね。
■お茶とお団子で一休み!
再び美術館に戻ると、気になっていたあれを試します。
美術館入り口右手にある、オープンキッチンスペースで
お茶とお団子がいただけるようです!
抹茶、煎茶、番茶の三種類から一つ選びます。
暑い日だったので、冷たい煎茶をいただきます。
こちらもキャッシュレス推奨。
お団子は目の前で焼いてくれます!
心づかいがうれしい!
デデン!
品のあるたたずまい。
審美眼を養ったあとの和スイーツは最高です。
醤油は湯浅醤油を、あんこは自家製で冷やしてあります。
どちらも上品な味わいで、冷たい煎茶によく合います。
広々とした飲食スペースでまったりいただきます。
ちょっとマイナーだけど、ゆっくりできてしかも展示品の質も高い。
近くに来たときだけでなく、わざわざ足を運ぶ価値があると感じさせる藤田美術館。
関西財界の重鎮、藤田傳三郎が集めに集めたコレクションの数々をぜひ!
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