Osaka Bob FAMILY
アンニュイな世界で交差する。アルフォンス・ミュシャと宇野亞喜良の存在感
桜が散ったら、雨が続いたら…。
五月病なんて言葉があるけど、物憂げな季節がやってくるね。
まいど、キムです。
物憂げ、気だるさ、倦怠などを意味するアンニュイはマイナスな印象を受ける言葉かもしれないけど、芸術家にとって大切な表現要素なんだ。
そのアンニュイをテーマにした企画展が、堺 アルフォンス・ミュシャ館で開催中。
今日はその見どころを紹介することにしよう!
[目次]
■華麗な作品に見え隠れする憂い。アンニュイに酔いしれる企画展
アルフォンス・ミュシャの才能が花開いた19世紀末のパリでは、産業革命や都市の発展により人々の生活は大きく変化。エッフェル塔の完成やパリ万博の開催など明るい話題も続き、ベル・エポック(良き時代)と回顧される都市文化が華やいだ時代だったんだ。
その一方で、文学・美術の世界には妖しく頽廃的な雰囲気も漂っていた。
それはミュシャが描いた、優美な微笑みを浮かべながらも、どこか物憂げな遠い目をしている女性たちからも感じられる。
そこにクローズアップしたのが、今回の企画展「アンニュイの小部屋 アルフォンス・ミュシャと宇野亞喜良」。
ミュシャ作品の華麗さに見え隠れする憂いの表情に注目し、さらに少女像と幻想的な世界観で知られるイラストレーター宇野亞喜良の作品が、刈谷市美術館から特別に出品。
時代を超えた二人の芸術家が描き出す“アンニュイ”の魅力に迫っているんだ。
■ミュシャのイメージにない幻想的な作品。ミュシャファンも必見!
今回はアルフォンス・ミュシャの作品約80点に、宇野亞喜良の作品約50点を展示しているんだ。小部屋に見立てた5つのセクションで構成され、グラデーション、蛇、アイデア、男装劇、シンボル、装飾画、横顔、少女といったキーワードから、アルフォンス・ミュシャと宇野亞喜良の美意識がクロスする。とても贅沢な企画展なんだ!
その中でもいくつか見どころを紹介するね。
4階の展示室に入ると、大型の油彩画「ハーモニー」がお出迎え。
左右の明暗の色調の流れを受け、ハーモニーの左側には明るい作品、右側には神秘的な作品が並ぶ。
明るい作品はいかにもミュシャって感じの作品だけど、右側に展示されているものは「おや?」って感じる作品が多いんじゃないかな。
中でも興味深いのが1894年に描かれた「ポエジー」。
実はこの作品、昨年の修復時の赤外線調査で、絵の下に別の絵が描かれていることが分かったんだ!
ポエジーに描かれた“大いなる存在”の左腕あたりをよく見ると、確かに聖母の顔が…。
ミュシャが何かを意図してそうしたのか、それともキャンバス自体が貴重な時代だったので単に上から別の絵を描いたのか。はっきりしたことは分からないけど、とてもミステリアスだね(絵は現地に行って見てね)。
また「主の祈り」というミュシャが描いた祈祷書をよく見ると、目玉がいっぱい描いてあって、とてもアニメチックに見える。
こういう妖しげな絵を描いているなんて知らなかったなぁ。
冒頭から僕がアンニュイな気持ちになってきた(笑)
■日本のイラストレーターの先駆者・宇野亞喜良の貴重な原画も見れる!
もちろん宇野亞喜良の作品も見どころがいっぱい。
例えば1960年代に若い女性の間でブームになった「フォア・レディース・シリーズ」の原画。寺山修司の詩に宇野亞喜良がイラストを寄せたものだけど、詩をそのまま絵にしたわけじゃなく、読んだ人が感情移入できるような空想的な仕上がり。
今見ても新しくてかわいい印象を受けるね。
他にも化粧品のマックスファクターの広告ポスターも。
すごくいい意味で尖っているよね!
■そして、二人の偉大な芸術家の美意識がリンクする
そんな偉大な二人の芸術家がリンクするのが今回の見どころ。
こちらはアルフォンス・ミュシャがデザインしたジュエリー「蛇のブレスレットと指輪」。
2つの蛇の頭を向かい合わせになるアイデアを取り入れている。
そして、これは宇野が描いたマックスファクター(EGYPTIAN LOOK)ポスター。
エジプト風の女性の右腕には、蛇が巻き付いているよね。この蛇は両端に頭があるのが分かるかな。
ドイツの美術館に頭が2つある蛇のジュエリーが収蔵されていて、もしかしたら二人ともそれを見て、制作過程のアイデアにつながったのかもしれない。
他にもミュシャがよく用いた全体を装飾的なフレームで囲むアール・ヌーヴォ的な趣を、宇野作品から感じる取れるなど、二人の偉大な美意識を楽しめるのが、今回の一番の見どころだと思うんだ。
さて、館内を進んでいこう。
この展示室にはなんとソファーが置いてある!
これは堺市のローソファ専門店HAREMのソファー。
見る側もアンニュイな姿勢で作品を鑑賞できる企画なんだって!
二人掛けソファーの前に展示されているのはミュシャの「黄昏」(企画展の後期は入れ替え予定)。
4人くらいが座れる大きなソファーの前には風景が描かれている絵が並ぶ。
ここで面白いのはチョコレート会社のノベルティで描いたミュシャのカレンダー作品。
男性の幼年期、青年期、壮年期、老年期を春夏秋冬になぞらえてあるんだ。
ソファーに座って人生のライフステージに想いを馳せる。なんて贅沢な美術館の使い方なんや!
そうそう、カレンダーは1898年のものだけど、実は2022年とまったく暦が同じだから、今年のカレンダーとしても使えるんだって。
ソファーエリアの次は「アンニュイな少女たち 微笑まない少女が見つめる先」。
アルフォンス・ミュシャも宇野亞喜良もたくさんの少女の作品を描いているけど、笑顔が少ない。
アンニュイな雰囲気をすごく感じるね!
■大阪モード学園とのコラボ企画。ミュシャの魅力がメイクやドレスに!
アンニュイはファッションやメイクの世界でもよく使用される言葉。
そこで、大阪モード学園の学生がミュシャのアンニュイをテーマにして作品を制作する企画が実現したんだ。
それがこちら。
メイク・ネイル学科の学生さんの作品。
まさに現代のミュシャ!
とてもエネルギーを感じるし、もしミュシャがアートディレクターとして現代でメイクを広めるなら…なんて想像をしてしまう秀逸な作品だね。
3階ではスタイリスト学科の学生さんが、ミュシャの「4つの花」という作品をイメージしてドレスを制作。
やはりミュシャの作品に漂うアンニュイな雰囲気から着想を得た作品。
アンニュイというふわっとした言葉だからこそ、さまざまな解釈で作品作りをしてくれたみたいだね。
大阪モード学園とのコラボレーション企画、すごく面白い!
そして、この3階には「ミュシャLabo」が新たに誕生。
ミュシャを実験的なまなざして紹介する年間シリーズ展なんだ。
第1弾のテーマは写真!
ミュシャって実はモデルの写真をよく撮影していたんだ。
写真にグリッド線を書き、新たなポーズを考案していたらしい。
実はミュシャの有名な作品は概ね5年間に集中しているんだけど、写真の活用があったから短期間にたくさんの制作が可能だったのかもしれない。
ミュシャの写真を活用した制作プロセスに焦点を当てる一方、古典写真家・若林久未来がミュシャを題材にした新作を紹介している。
これはミュシャの題材に完全手作業で仕上げた作品。
古典的な写真技法“ヴァンダイクプリント”を使い、さらに古典とデジタルを融合させたオリジナル技法で生み出されているんだ。
美しい茶色が特徴的だね。
写真から絵を描き、絵を写真にする。
なんだか不思議な実験だけど、ただ元に戻すのではなく新しい魅力になっているから、それもまた不思議だ。
コラボレーション企画もあり、見どころたっぷりな企画展「アンニュイの小部屋 アルフォンス・ミュシャと宇野亞喜良」は7月31日(日)まで。
桜が散ったら、雨が続いたら。
物憂げな季節にぴったりな世界へ、みんなも足を運んでみてはどうかな!
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