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天下の台所から東洋のベニスへ、中之島周辺でレトロ建築巡り

超高層ビル群が立ち並ぶ大阪有数のビジネス街・中之島は近代モダン建築の宝庫としても有名です。美しく重厚な都市景観が生まれた理由は大阪の歴史にあり!普段何気なく見ている街並みの印象が変わる(?)中之島発展のストーリーをご紹介します。

■中之島の歴史

中之島の開発の歴史は江戸時代にまでさかのぼります。諸藩の大名が年貢米の換金や産物の売買のために、蔵屋敷を水運の便が良いこの地に置いたことが始まりです。以後、全国各地の物資が集中し「天下の台所」として発展を遂げました。1703年には世界初の先物市場である堂島米市場が設立され、全国の米価の基準となったそうです。現在、この跡地には安藤忠雄さんが設計した米粒の形の記念碑があります。

建築家・安藤忠雄さんデザインの一粒の光

明治に入って政治の中心が東京に移った後も、紡績や造船などの工業化が進み、「大大阪」と呼ばれるほどに商工都市としての存在感を増していきます。文化芸術が花開いたのもこの頃。官庁や文化施設の用地となり、西洋建築に影響を受けた華やかな意匠の近代モダン建築が造られました。その建築の数々は今でも見ることができます。年代順にご紹介していきましょう。

■日本銀行 大阪支店(旧館)

1903(明治36)年完成。東京駅や大阪市中央公会堂を手掛けた日本近代建築の父・辰野金吾により設計されました。御堂筋に面した旧館はドーム型の屋根と渦巻き状の装飾が施されたイオニア式の柱が印象的。デザインはベルギー国立銀行等をモデルにしたとされており、ヨーロッパの古典主義の流れを汲む堂々たる造りです。

辰野金吾設計の日本銀行大阪支店

ちなみに、大阪支店は過去に2度移転しており、現在の店舗のある地は、かつて実業家の五代友厚(NHKの朝ドラと大河ドラマでディーン・フジオカさんが演じた役ですね)の私邸がありました。すぐ近くの大阪証券取引所の前には五代の銅像も!

大阪証券取引所前にある五代友厚の銅像

■大阪府立中之島図書館

1904(明治37)年完成。辰野金吾の下で学んだ野口孫市により設計された国の重要文化財です。外観は新古典主義を忠実に再現した、まるでギリシャ神殿のような均整の取れた風格ある佇まい。

国の重要文化財・大阪府立中之島図書館

一方で円形ドームがある吹き抜けのホールは、大階段や回廊のゆるやかな曲線とステンドグラスが映え、優美な趣を感じさせます。通常、大理石が使われる階段や回廊に敢えて木材を用いたのは、日本らしさを演出するためとか。

大阪府立中之島図書館の吹き抜けのホール

館内にはデンマークのオープンサンド・スモーブローが頂けるオシャレなカフェ「smørrebrød kitchen nakanoshima」もあるので、ゆっくり過ごせそうです。

スモーブローキッチン中之島

■青山ビル

1921(大正10)年完成。北浜駅にほど近いスパニッシュスタイルの建築で、実業家・野田源次郎の個人邸として建てられました。現在は飲食店やオフィスなどが入居するテナントビルとなっています。夏になると外壁を覆う蔦が見られますが、これは甲子園から株分けしてもらったそうです。国登録有形文化財。

甲子園から株分けされた蔦に覆われれる青山ビル

■旧ダイビル本館

1925 (大正14)年完成。大阪を代表するロマネスク様式の名建築です。現在の建物は2013年に復元されたものですが、エントランスの床タイルや2階の手すり、郵便ポストなどを再利用し、竣工当時の面影を今に伝えています。

ダイビル本館のエントランス
ダイビル本館エントランス内にあるレトロな郵便ポスト

玄関のエレガントな石彫刻も素晴らしく、上部にある大蔵貞蔵の彫刻「鷲と少女の像」は、大阪市指定有形文化財に指定されています。外装のスクラッチタイル(レンガ)も当時のものを一個一個手作業で取り外して使用おり、その数なんと15万個!歴史の重みを感じずにはいられません。

ダイビル本館の壮麗な外観

大阪中之島周辺の近代モダン建築、いかがでしたか?江戸から続く商いの街・大阪の歴史と文化に思いをはせ、まち歩きを楽しんでみてください。

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