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駅のホームを突き抜ける大クスノキ! 京阪萱島駅と阪急服部天神駅には神社の御神木を切らず保存した歴史あり

神社は、初詣はじめ日本人の暮らしと結び付いている。
山や石や樹木という自然を神聖なものとして祈りの対象にすることも多く、クスノキなどの大木を御神木としてまつる神社も多い。人の命よりも長い寿命が、永遠を感じさせるからだろう。

その御神木が、通勤客・乗降客が行き交うホームに鎮座する駅が、大阪に2駅もある。
京阪本線・萱島(ルビ=かやしま)駅(寝屋川市)と、阪急宝塚線・服部天神駅(豊中市)だ。日本では他に例がないだろう。

なぜこうなったか。由来は2駅で共通している。
駅が出来た場所が、元々は神社境内の御神木があった場所で、駅舎の工事で切り倒される運命だったが、周辺住民が大切にしていることを尊重し、鉄道会社が伐採せず現地保存したからだ。

[目次]

■グーグルマップでも確認できる。京阪萱島駅を突き抜ける萱島神社の御神木

京阪萱島駅は、淀屋橋から準急で16分の高架駅。
島状になっている淀屋橋方面行き3・4番ホームの西寄りに、樹齢約700年、高さ20㍍の大クスノキがある。

ホームの屋根には広い開口部があり、枝が分かれながら、生い茂った緑の葉とともに空に突き抜けている。グーグルマップの航空写真でも確認できる。
京阪萱島駅のホーム柵内に見える枝分かれ
ホームに立っていても、1本の木の存在感というよりは、森があるような雰囲気を感じる。

木の根元は、ホーム真下の地上にある。
駅を南へ出て高架下に回ると、そこに「萱島神社」があり、本殿の右に「大楠大明神」の小旗が並んだ朱色の鳥居がある。
京阪萱島駅の高架下にある萱島神社。右上はホーム屋根から突き出た御神木
京阪萱島駅の地上にある萱島神社からホームを見上げる
この鳥居の奥に、しめ縄が飾られた幹回り7㍍の巨大な根元が鎮座している。見上げると、高架のホームの床に穴が開けてあって、幹が大きく二つに分かれながら上に貫通している。

1972(昭和47)年、京阪は、輸送力増強で土居-寝屋川信号所間の複々線化・高架化に着工。萱島駅構内を南へ拡張するため、「萱島神社」の境内を買収した。
元々あった大クスノキは伐採する予定だったが、地元住民の強い要望を受け、保存を決める。
京阪の萱島駅ホームから見える御神木
木を動かさずにちょうどホームの真ん中で突き抜けるようにするには、高架駅の設計が大変だっただろうと想像する。1980(昭和55)年には神社本殿も、高架下に再建された。
本殿横にある由来説明の碑には「当地は江戸時代中ごろまで萱や葦が生い茂った中洲でした。中洲を開墾して新田ができるのですが、大クスは人々の生活とともに大地に根を張ってきたのです」と書かれている。

■菅原道真と同じく、地元で親しまれている服部天神宮のクスノキ

阪急服部天神駅は、大阪梅田から各停で11分。
駅の東側すぐ近くに、足を傷めた菅原道真の足が治った由来で知られる服部天神宮がある。服部天神駅のホーム御神木もクスノキだが、歴史は萱島駅よりも古く、明治時代までさかのぼる。
阪急服部天神駅の駅前から見た御神木
1910(明治43)年3月10日、阪急電鉄の前身「箕面有馬電気軌道」の梅田-宝塚間が開通して駅が誕生した時から、御神木がホームにあった。
線路が服部天神宮の境内を通ることになったが、地元住民がこの木に親しんでいたため、伐採することなく、駅が設計されたらしい。約100年前の最初からだったのだ。

服部天神駅は、大阪方面行きと宝塚方面行きの改札口が別々になっていて、大阪方面行きの改札を入ってすぐのホームど真ん中に、幹回り3㍍くらいの御神木がある。
阪急服部天神駅の宝塚方面行きホームから見た御神木
枝分かれした幹や葉は、突き抜けた屋根より上にしかないため、大きな床柱のようにも見えてしまうが、神棚がしつらえてあり、単なる柱ではない、と分かる。
木の全体は、対岸の宝塚方面行きホームから見るとよく分かる。高さ7㍍くらい。
駅の外の商店街からも、駅舎より高いこんもりした枝ぶりが見える。
阪急服部天神駅の構内にあるご神木には、屋根との境目には神棚がある
萱島駅ホームでは柵に囲まれているので幹に触れることはできないが、服部天神駅ホームでは目の前で見て、触ることもできる。
訪れた時も、改札を入ってまず幹を大事そうに触ってからホームへと歩き出すおばあちゃんがいた。「足の神様」で知られる服部天神宮と同じように、この木が地元の人に親しまれているのがよく分かる。
足の神様で知られる服部天神宮にある大きな下駄のオブジェ
阪急は毎年8月24日、このホームの御神木の前で鉄道運行の安全祈願をしているそうだ。
明治~昭和と、時を隔てて同じ判断をした大阪の二つの鉄道会社。景観、風物として興味深いのはもちろん、後世に語り継がれてよい大阪のストーリーだ。

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