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日本一低い山が大阪・堺に?
標高6.97mの蘇鉄山に登ってみた!

標高わずか4.53㍍の「天保山」(大阪市港区)が「日本一低い山」(諸説あり)として、ひと頃の超低山ブームで知名度が上がった。しかし「一等三角点」が頂上にある山で日本一低いのは、堺市堺区にある「蘇鉄山(そてつやま)」だ。標高6.97㍍。
三角点とは、国土地理院が地図を作るための重要な基準点。私は北アルプスのふもと・富山県で働いていた時、新田次郎の「劔岳 点の記」を読み、明治時代、剱岳山頂に三角点を設置しようと、陸軍陸地測量部の技師が難攻不落の峰に挑むストーリーに魅了された。「三角点」という言葉に弱い。
「どんな山なんだろう」。

登頂時間は30秒!

蘇鉄山があるのは、南海本線堺駅から海側にある大浜公園の中。日本最古の木製洋式灯台として国史跡になっている「旧堺燈台」の近くだ。
公園には体育館、相撲場、野球場、テニスコートがあり、子ども用の遊具もある普通の緑地。「どこにあるのだろう?」と思っていたら、園内の案内図にちゃんと蘇鉄山が描かれていた。矢印付きの表示板もある。
大浜公園内の案内表示

散歩道を行き、たどり着いた所は、古墳のような小山だった。少し離れて眺めると、山であることは分かる。樹木が周りを覆っていて、ふもとに「一等三角点のある日本一低い山 蘇鉄山登り口」と書いた白い標柱が立っていた。「くの字」型の登山道が見える。
歩数を数えながら、クロマツの間を登っていく。40歩、時間にして30秒で山頂に着いた。
南ルートの登山口

山頂は平らで、割と開けている。「三角点はどこ? あれだ!」。南の斜面寄りの地面に、四角形の石が埋め込まれている。枠の石の内側には「+」印が刻まれた石があり、隣に「三角点」と書かれた白い標示杭もあった。一等三角点の威厳を感じる。山名の由来に合わせたのか、三角点の隣などに山頂にソテツが植えられていた。庭石のような大きな石が何個もあり、腰をかけて、しばし登頂の感慨にひたった。
蘇鉄山の山頂

神明神社へ行くと登山証明書がもらえる!

眺望は、良くはない。北の方を見ると、堺港の守り神とされる「龍女神像」が遠くに小さく見える。西を向くと、阪神高速湾岸線の高架や、工場の紅白の煙突が見える。
三角点の横の看板には、「三角点は当初、300㍍東南にあった御蔭山(みかげやま)に明治18年に設置されたが、御蔭山が削られたため、昭和14年に移設されてきた」「蘇鉄山は2000年4月、国土地理院発行の二万五千分の一の地図に正式な山名として記録されたことで、一等三角点のある日本一低い山となった」と記されていた。
登山認定証さしあげます、の看板と一等三角点の石
驚いたのは、この看板に「登山認定証をさしあげます」と書いてあったことだ。
もらえる場所は、公園から歩いて数分の「神明神社」。早速、立ち寄った。
社務所は無人だったが、窓の前に、登山認定証(通し番号入り)が置いてあり、「ようこそお疲れさま この登山証をお取りになられましたら、1枚50円以上のおこころざしをお納め下さい」との説明書きあり。100円納める。
神明神社の登山証明書

歴史ロマンが詰まった充実の登山!

充実した散歩(登山と違うんかい!)だったのだが、その充実感は、訪れることで図らずも、この場所の幕末からの歴史を知ることになったことが大きかった。
そのきっかけは、蘇鉄山をぐるぐる歩いていた時、北斜面で、古い石柱を見つけたことだった。刻まれていた文字は「堺南臺場」「大正十年」。臺場(台場)とは砲台、つまり大砲を据える小高い場所のことだ。
大浜公園自体が、幕末の安政年間から、大阪湾に突き出た御台場(砲台場)だったのだ。尊王攘夷というか、外国の艦船が来たら砲撃するための基地だった。明治維新後、跡地は大浜公園として整備されていく。
想像だが、石柱は「臺場跡」を記すために大正10年に建立されたのではないか。石柱の文字は「堺南臺場跡」で、一番下の「跡」という字が地中に埋まっているのではないか、と思った。
北斜面にある「大正十年 堺南臺場」の石柱

後で調べて知ったことだが、明治10年に旧堺燈台が建ったころ、付近は潮干狩り場になり、公園内には明治36年、東洋一の水族館もオープン。相撲場が今ある場所には大正初期、海水を利用した潮湯施設(今でいうスーパー銭湯)や料理旅館が立ち並び、関西一円から集客する一大シーリゾートエリアだった。
山頂からちらっと見えた龍女神像は、水族館前に作られた「龍神噴水」がルーツで、昭和36年の水族館閉鎖で撤去されたが、2000年に堺市制110周年記念事業で、突堤に復元されたものだった。
まさに、「点」が線になり面になり、時を超えて立体的に感じられた登山だった。

富士山頂には一等三角点がない。一等三角点がある日本一高い山は、南アルプスの赤石岳(標高3120㍍)だそうだ。三角点は明治時代から設置され、二等、三等、四等もあり、一等が最も基準度が高い。天保山にあるのは二等三角点。
蘇鉄山に登るには、紹介した南コースと、北コースがある。南コースはつづら折れだが、北コースは直登だ。南から攻めるもよし、北から攻めるもよし。

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